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雨が酷くなってきた
どこか雨宿りができる場所は…
「なーがいくん一緒に遊びましょう!」
近くで聞こえたそのセリフに思わず身構える。
しかしその声色に違和感を感じた。
三佐にしては声が高すぎる。
「永井くん、こっちだよこっち!」
「はぁ?」
振り返ってみればそこにはボロボロになった黒い傘をさしている闇人がいた。
何故か楽しそうに笑っている。
いや、あの化け物達のことだ。
きっと新しい殻を見つけて喜んでいるだけに違いない。
「雨宿りの場所探してるんでしょ~だったら俺と相合傘して…ギャー!!」
攻撃してくるのかと思ったが、何故か話しかけてきた。
しかし、変なことを口走っているのでライトを当ててやる。
「ちょっと、顔が焼けるってば!」
と言いながらもがいている。
傘を盾にしているが、穴だらけなので光を遮れていない。
面倒な事になる前に持っている銃をそいつに向けた。
「ま、まってよ!雨宿りの場所提供するからっ!」
「なんだよお前…」
どうやら他の闇人と違うらしい。
見たところ、このボロボロの黒い傘しか持っていないらしく
銃器は見当たらない。
とりあえずライトだけ消してやる。
というリクを頂きましたので、
ロケット団解散しちゃってただの酒飲みオッサンと化してるラムダと
アポロが悪徳営業再開するということで、
ラムダを連れ戻しに来たランスの話を書かせて頂きました(長
ちゃっかりスオウの名前も出てきちゃってます、なんだか申し訳ない><
苦情等ありましたら、沁月さんのみ受け付けております。
某所、どこかのバーにて
ランプの光が店内を淡く照らし、静かな音楽が響いている。
客の数は少ないが、自分の世界と酒を楽しむには丁度いいようだ。
その中でも一人の男が情けない姿を晒しながら酒を飲んでいる。
「なんで解散宣言しちまうんだよぉ…」
空の酒のボトルが数本置かれているテーブルの上で項垂れながら、
まだ中身が残っているボトルに手を伸ばす。
どうやら、結構飲んでいるようだ。
「いくら子供に負けたからって解散はねーだろ。解散は。」
グラスに酒を注ぎながら、独り言を続ける。
「ロケット団は不滅とか言ってたの誰だよ。チクショウ。」
この男はあの悪の組織で有名なロケット団にいたらしい。
今の姿からはとても想像できない。
「俺様もう駄目だぁ…」
そう言って、乱暴にボトルを置くとまたテーブルにうつ伏せになってしまった。
「どこ探してもいないと思ったら、こんな所にいましたか。」
新しく入ってきた客は、店の中を見回し
ブツブツと独り言を言っていた紫色の髪をした男を見つけると
大きな溜め息をつき、その男に近付く。
「んー?お、ランスちゃんじゃねーの。」
「ラムダさん…これではただの酔っ払いのオッサンですよ…」
聞き覚えのある声に男は顔を上げた。
新客はどうやらこの酔っ払いの知り合いのらしい。
彼の情けない姿にランスと呼ばれる男は呆れた。
「そうだ、お前も飲んで行け~」
「酒臭っ!!貴方どれだけ飲んでるんですか!!」
酒を勧めながらイスから立ち上がると、ランスに絡もうとするラムダ。
しかしラムダから漂う強いアルコール臭に、
ランスはラムダを避ける。
「もー、つれねーなぁ…ランスちゃんは。」
「私に酒を飲んでいる暇はありませんから。」
ランスに避けられたラムダはいじけて口を尖らせ、
自分の座っていたイスに戻ると、グラスに残っている酒を飲み干す。
「じゃあ、ちゅーしようぜ。ちゅー。」
「気色悪いですよ、止めてください。酷い事しますよ。」
いじけたかと思えば、急に変なことを言い出す始末。
これでは本当にただの酔っ払いだ。
先ほど尖らせた口をラムダが近付けてくるので、
ランスは思いっきり手で押し退ける。
「ちぇー、ノリわりぃな。」
「アポロに貴方を連れ戻して来いと言われましたので…」
「あんだよぉ…俺様は帰らねーぞ。」
ノリが悪い事と、連れ戻しに来たという言葉が気に食わなかったのか
ラムダはまるで駄々をこねる子供の様にプイと顔を背けた。
その様子を見て、ランスは溜め息をつく。
「馬鹿言わないで下さい。大切な資金を無駄に使ってしまってるんですよ!貴方は!」
「そんなキーキー言うなよ。頭痛ぇ。」
「飲み過ぎの貴方が悪いんです!」
静かに話し始めたランスだったが、
ラムダがかなり資金を使ってしまってる様で、
最後の方はかなり強めに言うと同時にテーブルをバン!と強く叩いた。
その音に何人かランスとラムダの方を向いたが、
このくらいは日常茶飯事なのか、すぐに酒を楽しむ事へと戻っていった。
叫ぶほどの大きさではなかったが、思わずラムダは耳を手で塞ぐ。
その様子を見てランスはふんと鼻を鳴らして両腕を組む。
「そもそも、貴方が使ってるお金はスオウが新しい地方に行って集めたものです。」
「ふーん。」
まるで他人事の様にラムダは生返事をする。
そのやる気の無い返事にランスは眉を吊り上げた。
「ふーん…じゃないですよ!酒を飲むことだけに使われると困るんです!」
「何が?」
「何がって…貴方…」
むっとしたランスは思わず熱くなってしまうが、
やる気の無いラムダの言葉にランスは呆れて次の言葉を無くした。
「年下の、しかも子供がちゃんと仕事をしているのですよ?恥ずかしくないんですか?」
「別に、俺様は気にしないけど。」
「はぁ…この人にプライドはありませんでしたね。」
スオウのことを子供と言ってしまうのは失礼だとわかっているのだが
この時ばかりは、そうでも言わないと説得できそうになかった。
しかし、その効果は全く意味が無かったようだ。
今更ながらこの飲んだ暮れている男にプライドが存在しない事を
ランスは思い出して、さらに深い溜め息をついた。
「またロケット団を復活させるんですよ?」
「俺様、今そういう気分じゃないの。」
再び悪事を始めると言うのに、全く乗り気でないラムダ。
彼は中身が残っている酒が無いか探し始めた。
「はー…全くこの人は面倒臭いですね。」
全く戻る気が無いラムダに段々腹が立ってきたランス。
この調子では何を言っても、もう駄目だろうと思ったランスは
力尽くで酒を探しているラムダを引っ掴み、そして
バシッ!!
「痛てぇっ!!何すんだよランスちゃん!」
ラムダの頬に平手打ち。
相当強力な平手だったのかラムダは椅子から落ちた。
これには数少ない客が何事かと二人に視線を向ける。
滅多にランスが手を出す事はないのだが、
今日ばかりは抑えられなかったようだ。
「貴方がいつまでも泣き言を言っているからです。」
「だからって平手はねーだろぉ…超痛い。」
引っ叩かれた頬を擦り、椅子から落ちたラムダは涙目になりながらランスを見る。
「おや、一回では効果が無かったようですね?」
「ばーっ!ちょ、もういらないから!いらないから!」
ラムダは悲痛な叫びを上げたが、反省の色が見えないため、
ランスはわざと聞こえていないフリをする。
きっと彼のことだから少し楽しんでいるところもあると思うが…
「どうやらもう一回必要なようです。」
「ごめんなさい!ちゃんと帰ります!勘弁して下さい!」
再びラムダを引っ掴み、平手をお見舞いしようとすると
すごい勢いでラムダが土下座した。
様子を見ていた客はただの痴話喧嘩かと解釈すると
酒を楽しむことに戻る。
「それでいいんですよ。最初からそうして下さい。」
「はい…すみませんでした。」
全く手のかかる人ですね、と言いながら
土下座をしているラムダを立ち上がらせる。
「私のおかげで酔いも冷めた様ですし、さっさと帰りますよ。」
「くそー、自称冷酷のクセに…」
「何か言いましたか?」
「いいえ!何も言ってません!」
踵を返して、さっさと店を出ようとするランス。
ボソリと彼にに聞こえない様、悪口を言ったラムダだったが、
ランスが怪訝な顔をして振り返ったので、とりあえず何も言っていないことにした。
(もう、平手はごめんだ!)
余程ランスの平手が痛かったらしい。
ラムダは今後、ランスを怒らせないようにしようと肝に銘じた。
「言っておきますが、貴方が使ってしまった資金は返してもらいますからね!」
「それって当分給料無しってことか?」
「当たり前です。」
「マジかよ~」
釘を刺すかのようにランスがキツめに言った。
ロケット団の大切な運営資金でもある物を使ってしまったのだ。
自業自得とわかっているが、ラムダはがっくりと項垂れる。
「ちゃんと返すまで私が見張ることになってます。」
「あぁ!?なんだよそれ!」
「貴方が真面目に返してくれれば何もしませんよ。」
「くそ~、当分ランスちゃんと一緒かよ…」
多分、アポロの考えた事だろうと思ったラムダは
今更ながら飲み明け暮れていたことを後悔した。
今後ランスが一緒となると気軽にサボることもできないだろう。
「あ、言い忘れてましたが、アポロも怒ってましたよ。」
「アポロもかよぉ…あいつ怒るとアテナよりめんどくせぇんだよな。」
「自業自得ですよ。たっぷり叱られてください。」
「へーい。」
帰ってもまた怒られるのかよ…と、ラムダは気持ちが沈んだが
アポロに怒られるのはこれが初めてではない。
どうすれば許してもらえるのかぐらいは知っている。
「はぁ…ランスちゃんの平手も食らっちまったし、ひでぇ日だ。」
「ほら、さっさと行きますよ!」
とんでもない日だなと思いながら、店を出ると夜が明けようとしていた。
薄明るくなってきている空をラムダは見つめる。
あまりにものろのろとしているので、
先に行ってしまったランスが遠くで叫んだ。
「ま、ロケット団復活するみたいだし、良しとすっか。」
また痛い思いをするのは嫌なので、足早に追いかける。
こうしてラムダはロケット団へと戻されるのであった。
突発的に書いた二次創作的な何か。
セトとサマエルの出会い話。
僕の両親は二人ともゴッドイーター。
母親は結婚してから引退したけど、父親はまだ現役。
そんな二人の間に生まれた僕はすでに未来を決められていた。
ゴッドイーターという未来を・・・
最初は渋々やっていたけれど、
本格的に嫌になってきた。
家から追い出されてもいい、もうこんな仕事は辞めるんだ。
そう決意したセトはとりあえずツバキに話してみようと思い
自室から出てエレベーターを目指す。
「きっと教官のことだからエントランスにいるよね。」
辞めたいって言ったら怒られるかな・・・
と少し不安に思いながらもエレベーターの前に到着した。
どうやら下で誰かが乗ったらしく、上に来るようだ。
(ベテラン区に行っちゃうかも)
自分の階を通り過ぎるかなと思ったが、
次の瞬間目の前の扉が開く。
エレベーターから一人だけ降りてきた。
白に近い銀髪と重低音が漏れるヘッドフォンに黒いスーツを着た少年
彼はセトを気に留めることなく、横を通り過ぎる。
一方、セトと言えば突然扉が開いたことにびっくりして
その場に固まっていた。
(今のは?)
エレベーターから降りてきた人物に興味を惹かれたセトは
勢い良く振り返る。
彼はエレベーターから少し離れた場所で自室の鍵を開けていた。
そしてセトの視線に気付く事無く、部屋への中へと消えていく。
「天使・・・」
セトはエレベーターが行ってしまうことに気付かず
その場に立ち尽くした。
「白銀の天使だ!」
意味の分からないことを叫んだセトは、
ゴッドイーターを辞めるという事をすっかり忘れ自室に走っていった。
な話です。まだ誘拐されねぇです。
ロケット団は悪の組織です。超悪徳業者です。
それでもOKな方はレッツスクロール!
ライモンシティ、バトルサブウェイの駅長室にて
「只今戻りました。」
「…あ、お帰り~ノボリ。」
今日も挑戦者を見事に蹴散らしたノボリが戻って来ると
自分のデスクに座り、ココアを飲んでいるクダリが笑顔で出迎えてくれた。
今日は彼の所に挑戦者は来ていない。
しかし、いつものクダリと違い反応が遅かった。
何か考え事でもしていたのだろうか…
「どうかしましたか?」
「う、うーん…」
様子のおかしいクダリに尋ねながら自分のデスクに座るノボリ。
クダリは言葉を濁したまま、黙ってしまった。
どうやら言おうか、言わないか迷っている様子。
そんなクダリを急かしたりせず、ノボリは黙って次の言葉を待っている。
「…あのね、鉄道員達が話してるの聞いたんだけど、ノボリは知ってる?」
「何をです?」
「ここ、バトルサブウェイを模して悪い事やってる人たちのこと。」
「……」
ここの所、挑戦者が少なくなってきたのはその影響かなどと
悠長なことを思ったが、他人事とは思えないノボリは眉間に皺を寄せた。
「勝つと願い事一つ叶えてくれるけど、負けるとポケモン全部捕られちゃうんだって。」
「……」
悪徳営業としか思えないそれに、ノボリは眉間の皺を増やす。
「勝った人は?」
「なんか最後の二人が強いとかで、いないみたい…」
バトルサブウェイを模したとだけあって、
どうやらその電車にもマスターというものがいるようだ。
「二人…ということはダブルなのですか?」
「そうみたい。」
見過ごしても良かったが、
バトルサブウェイの名を汚されている様な気がした。
すぐにでもここから飛び出して、そこへ向かいたい逸る気持ちを抑え
ノボリは静かに自分のデスクから立ち上がった。
「場所はどこですか?」
「やだー!ボクも行くの!」
ただ場所を聞いただけなのに、
クダリはノボリが一人で行こうとしていることを察知して
ガタン!と自分のデスクから勢いよく立ち上がる。
双子の片割れ、自分の身体の一部でもあるクダリを
ノボリは危険な目に遭わせたくなかったが、
こうなったらクダリは言う事を聞いてはくれない。
「仕方ないですね…危ない事はしないでくださいよ?」
「だいじょーぶ!ノボリとボクなら向かう所敵無しだよ。」
ダブルバトルなら彼と一緒に行った方が心強い。
今日はもうこれで終了だが、もしもの時のために
ノボリは書置きを自分のデスクの上に置いていった。
日の沈んだ頃、使われていないビルが立ち並ぶ場所にて
「本当にここなのですか?」
「うん、この辺だって聞いたんだけど…」
クダリが聞いたところによると、
この人気の無い場所に案内人がいるらしいのだが…
「お、挑戦者か?」
ビルの壁によりかかっている人物が声を上げた。
びっくりしてノボリとクダリは身構える。
彼は街灯の光が届かない場所にいるため、顔はわからない。
「やっと、本命が来ましたか…」
さっきのとは違う声が聞こえた。どうやらもう一人いるらしい。
す、と数少ない街灯の明かりの下に二人が出てくる。
一人は紫の髪でモヒカンの様になって、顎には髭が生えていて
いかにもオッサンという雰囲気を出している。
もう一方は帽子を被り、緑の髪と鋭い眼光を覗かせている。
二人とも黒い服を身に纏い、胸の辺りに赤いRの文字があった。
「貴方達ですか、バトルサブウェイを模して悪い事をしているというのは…」
「悪い事?勝負に負けたらポケモンを頂くのは私たちにとって基本ですよ。」
どうやら彼らにとってポケモンを奪う事は当たり前のことらしい。
ノボリに悪い事と言われて心外だったのか、帽子を被った彼は目を細めた。
「お前等が中々来てくれねぇから、かなりの数頂いたけどな。」
「なっ。」
もうすでにかなりの犠牲者が出ているようだ。
何故このことが自分の耳に早く入らなかったのか、
ノボリとクダリは悔しく思った。
「捕ったポケモン返してあげて!」
「おや、そう簡単には行きませんよ。」
クダリが悲痛な声で叫ぶと緑の方が楽しそうに笑う。
「貴方達が勝てば何とかなるかもしれませんがね。」
「何それ!答えになってない!」
不透明な答えにクダリは不愉快そうな顔をしたが
緑の男は意味深げに笑っている。
ノボリはこの時、何か嫌なものを感じた。
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私はランスと言います。」
「俺様はラムダ。よろしくな白黒双子!」
「…おじさん、悪者なのに随分と馴れ馴れしいね。」
ランスの機械的な冷たい態度とは異なり、
ラムダはどこか悪者らしくない陽気な笑顔を浮かべている。
「おじさんじゃねー!ラムダって呼べ!」
「こんな所で無駄話してると、上司が怒ります。」
「あ?そうだったな。」
おじさんとクダリに呼ばれ、怒ったラムダだったが
ランスに制され自分の仕事を思い出す。
「それと貴方が余計な事を話してしまいそうなので。」
「手厳しいなぁ、ランスちゃんはよぉ。」
「ったく、このオッサンは…早く行きますよ。私たちについて来て下さい。」
二人の後をついて行くと、そこには大型のトラックがあり
ノボリとクダリはトラックのコンテナに乗せられた。
ラムダは運転、ランスは二人が逃げ出さない様に見張り役なのか
ノボリとクダリと一緒にコンテナへと同乗した。
「どこへ行くのです?」
「さぁ?それは着いてからのお楽しみです。」
エンジンの低い唸り声と共に、トラックが動き出す。
ノボリはランスに行き場所を聞いたが、ちゃんとした答えは返ってこなかった。
コンテナの中には窓が一切無く、外は見えない。
きっと道のりを知られないための手段だろう。
どれだけの時間が経っただろう
コンテナの硬い床に座っているだけで、誰も何も話さない。
クダリはそんな沈黙に眠くなってきたのか船を漕いでいる。
不意にトラックが止まり、エンジンが切れた。
そしてコンテナの扉が開かれる。
「クダリ!起きてください。」
「ん…着いたの?」
ランスは先に降りてしまった。
夢の中へ落ちかけているクダリをノボリは揺すって起こす。
欠伸をしながらクダリは立ち上がり、ノボリと一緒にコンテナから降りる。
「次はこのボートに乗ってもらいます。」
トラックのコンテナから降りると、
ランスが指差す方向に、次はボートが待っていた。
一体何処へ連れて行く気なのだろうか?
クダリは不安になってきたのか、ノボリの腕にしがみつく。
「お、怖くなったか?」
「怖くなんかないもん!みんなボクとノボリでやっつけてやるんだから!」
「こいつは失礼。」
その様子を見ていたラムダがクダリをからかう。
強がっているクダリに謝るが、ニヤニヤしていることから
ラムダに謝罪の気持ちは全く無いのがわかる。
「さっさとエンジンをかけてください。」
「あーあー、わかったよ!」
怖がっているクダリをからかって楽しむラムダに、
ランスの鋭い指摘が飛んできた。
うるせぇなと思いながらも、エンジンの紐を引く。
すさまじい音を出しながらモーターが回りだし、
ボートはこれまたラムダの運転で海を進み始める。
暗い夜の海をボートで移動する中、
前方に何やら明かりが点いた物体が見えてきた。
「…船?」
静かに海に浮かぶ物といえば船くらいしか思いつかない。
しかし、それは近づくことで大きく裏切られることとなる。
「こ、これは…」
「海の上を走る電車なの?すごい…」
二人の目に飛び込んできたのは船では無く、
不思議と波の無い海に、ポツンと浮かぶ七両編成の黒い電車。
車内からは光が漏れ、黒い車体には赤いRの文字が書かれている。
その異様な光景にノボリは唖然とし、クダリは思わず感動してしまった。
「な、すげーだろ。これは…てっ!」
「余計な事は話さないでくださいよ。」
クダリの言葉に調子に乗ったラムダが余計な事を話しそうになったので、
運転しているのにも関わらず、ランスはラムダを思いっきり引っ叩いた。
「だからって叩くことはねーだろーが…」
「貴方がうっかり口を滑らせない様に私がいるんです。」
「くそー全部計算済みかよ。」
叩かれた部分を擦りながらラムダはやられたとう顔をした。
「さぁ、お二人とも乗ってください。」
ボートを最後尾に着けると、扉が開くと共に階段が出現した。
ランスがどうぞ、と手を向けている。もう、後戻りはできない。
「行きましょう。」
「うん!」
ノボリとクダリは顔を見合わせ、頷き電車へと乗り込む。
車内も黒で統一され、座席のクッションのみが赤となっていた。
「あー、あー、マイクテスト。マイクテスト。」
二人が車内を見渡していると
しゃがれた声がスピーカーから流れ、車内に響き渡る。
「ヒヒヒ、悪徳列車にご搭乗いただき、誠にありがとうございます。
挑戦者が乗りましたので、これより出発致します。発車の揺れにご注意を…
といってもこの電車は揺れたりしないがね。ヒヒヒ…」
不気味な笑い声が気になるが、アナウンスの通り
この電車は気付いたら走り出していた。
窓の外には海と遠くに見える街の明かりが静かに流れていく。
「さぁ、挑戦者はマスターに勝つことができるのか!?」
これから始まるであろうバトルに供え、
ノボリとクダリは帽子を被り直した。
-多分、つづく-