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管理人が好き放題やりたい放題書き散らしてる同人テキストです。



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沁月さんより、ロケット団で何か一作
というリクエストを頂きましたので、
アポロにイタズラして酷い目に遭うラムダの話を書かせて頂きました。
ちゃっかり、沁月さんのブログからヒント得てたりします。
あと、うちのオリキャラが巻き込まれてたり
やっつけ感がハンパないです…orz
苦情等ありましたら、沁月さんのみ受け付けております。










カントー某所、ロケット団アジトにて

色味の無い、シンプルなとある部屋。
しかし、置いてあるものはそれなりの価値を持つものばかりである。
それもそのはず。
この部屋はロケット団の中でも幹部クラスが使う部屋だ。
その静かな部屋にカリカリとペンを走らせる音だけが響いている。

「ふう…」

仕事に一区切りついたのか、アポロは一息つくと
忙しなく動かしていたペンを持つ手を止め、
革張りのいかにも高そうなイスの背もたれに身体を預ける。

「いくら幹部の仕事と言えど、長いデスクワークは疲れますね。」

報告書やら新たな計画に、その他色々。
眩暈がしそうな程の紙の束が、机に高々と積まれている。
したっぱは山のようにいるが、有能な幹部は数少ない。
手間のかかる仕事はほぼアポロに回ってくるのだ。

「…おや、これは?」

紙の山を見つめながら、
利口な部下を探すべきか…
と悩んでいると、ふと視界に何かが入り込んできた。
それは不自然に机の中心に置かれている小さな箱。
怪訝な顔をして、アポロはそれを手に取る。

「誰がこれを…」

書類の始末をしている間は生返事しかしない。
話しかけられても、話の内容があまり記憶に残っていなかったりするのだが、
誰が来たかぐらいは記憶している。

「確か、アテナとランスとしたっぱと…ああ、あとラムダがいましたね。」

アテナとランスとしたっぱは仕事の報告に来た。
ラムダはアポロが忙しいにも関わらず、油を売りにきた気がする。
しかも、まだ言いつけた仕事を済ませていない様子だった。

「あの男は本当に腹が立ちますね。仕事が終わってなかったらどうしてくれましょうか?」

黒い笑顔を浮かべながら、箱のフタを開ける。
中にはごく普通の丸いチョコレートがいくつか入っていた。

「何ですかこれは…まさか…」

一つを摘み上げ、眉間に皺を寄せるアポロ。
チョコレート企業の策略とも言えるバレンタインが先日あった。
今では男女だけでなく、同性や友達、さらに家族にも渡すらしい。
あの不真面目なラムダが上司にチョコを渡すなど
恐ろしすぎて、アポロは心底不愉快そうな顔をした。

「とても怪し過ぎて、食べるのは気が引けますね。」

あのラムダのことだ。
どうせまたくだらない悪戯でも思いついて
何かをこのチョコレートに仕込んだに違いない。
そう思ったアポロはチョコレートを箱の中に戻した。

「そうですね…これは誰かに食べてもらいましょう。」

いい息抜きになりそうだと思ったアポロは
小さな箱を片手に自室を出た。





ラムダが作ったチョコレートの犠牲者を探して廊下を歩いていると、
前方からきついピンク色がこちらに来るではないか。
横には彼のお気に入りである、ズルズキンがいる。

「おや、いいとろこに。」
「僕に何か?」

アポロが声をかけると、スオウは足を止めた。
一方、ズルズキンは声をかけてきたのがアポロと気付くと、
スオウの足に隠れながら、すごい形相で睨みつけてきている。

「これを一つ、いかがです?」
「何ですかこれ…」
「チョコレートです。」
「……」

いつも以上に爽やかな笑顔を見せ、チョコを差し出すアポロ。
何か裏がありそうな気がしたスオウは、すぐに手を伸ばそうとはしなかった。
長い付き合いではあるが、アポロから物を貰ったことは一度も無い。

「これ、もしかしてラムダさんが作っていたやつでは…」

アポロが自分でチョコを作るようには見えない。
かと言って、彼が買う様な高級な物でもなさそうだ。
きっと、先日のバレンタインでしたっぱの女の子達から
たくさん貰った物の一つかと思ったが、
アポロが手にしている箱はあまり飾りっ気が無い。
そういえば、厨房で楽しそうに何かを作っているラムダを
スオウは見かけている。

「おや、よくわかりましたね。」
「全く…得体の知れない物を食べさせようとしないで下さいよ。」

変なものを食べさせようとしたアポロに
スオウは不機嫌そうな顔をし、腕を組む。

「これは失礼。ところで、ラムダが作っているところを見たのですか?」
「厨房でコソコソ何か作ってましたよ。妙に楽しそうにでした。」
「ほう…」

スオウが食べなかったのは残念だが、
あのオッサンがロクでもない物を作るのに時間を割いてたと知り
アポロは目を細めた。

「ん、どうかしました?」

スオウがアポロと話していると、
突然ズルズキンがスオウの服を引っ張ってきた。

「駄目ですよ。食べたらお腹を壊すかもしれないんですから。」

チョコのいい匂いを感じ取り、食べたくなったのか
ズルズキンはアポロが持っている箱を指差している。

「ほら、どうぞ。」
「あっ!」

この得体の知れないチョコを食べさせないつもりでいたのだが、
スオウが止める前にアポロはズルズキンに渡してしまった。

「ちょっと!何で渡すんですか!!」
「彼が食べたがっていたので。」
「……」

いい事をしたとばかりに爽やかな笑顔を見せるアポロ。
腹が立ったスオウは何か言おうと口を開けたが、
面倒なことになりそうだと思い、すぐにその口を閉じた。
しかし、心の中では

(こんな時ばかり迷惑な親切を…)

と思っていた。
チョコをもらえてすごく嬉しそうな顔をしたズルズキンは
躊躇無く、口の中へと放り込み租借する。
そして、飲み込んでから数秒。
急にズルズキンがフラフラとして倒れた。

「なっ!毒でも入って…」

突然倒れたズルズキンを
スオウは慌てて抱き起こす。

「…これは、お酒ですね…」
「あの男は本当に酒が好きですね。」

ツンと鼻を刺激する臭いにスオウは呆れた様な顔をした。
酒、という単語にアポロは眉を吊り上げる。
無駄に資金を使い、酒浸りになっていたラムダを思い出すからだ。

「全く…僕は博士の所に行って来ます。」

スオウは溜め息をつくと、
酔っ払ってある意味瀕死になっているズルズキンをモンスターボールに戻す。

「あ、もしラムダさんに会ったらよろしく言っといて下さいね。」
「……」

(それと、貴方も覚悟しておいて下さい)

去り際にすごい形相でスオウはそう言い残した。
声には出さなかったが、ラムダだけでなく
アポロにもあとで何か仕返しをするつもりらしい。

「これは面白いことになりました。」

自分が仕返しをされるなど露知らず、
スオウに酷い事をされるラムダもきっと見ものだろう。
と、アポロは悠長なことを思っていた。

「あ、あれ?スオウさんここにいませんでした?」

スオウが去った後、神父の服を着た青年が後ろからやって来た。
久しぶりに見るその顔に、アポロは方眉を吊り上げる。

「おや、珍しい。」
「あっ!あ、アポロさん、お久しぶりです。」

アポロだと気付いて、青年は深々とお辞儀をした。

「リオットさん、どうして貴方がここに?」
「す、スオウさんに新しいポケモンを頂いたので、お礼をしようと思ったんですけど…」

(スオウも物好きですね。)

このリオットと言う青年は見ての通り神父だ。
悪とは縁の無い職業。
リオットがどんな経緯でスオウと知り合ったのかは知らないが、
聖職者が悪の組織であるロケット団に入ったのだ。
彼は非常に臆病で、人やポケモンを傷付けることに対して躊躇する。
どう考えても悪人には不向きだ。
使えない者など、さっさと切り捨ててしまえばいいのに
それをスオウはしない。
まだ、子供ということか
それとも別の何かがあるのか。

(まぁ、私が首を突っ込む様なことではないでしょう)

策を投じてあの神父を追い払うこともできる。
しかし、それほど邪険に思っているわけでもない。
リオットは仕事の効率は悪いが、礼儀はそれなりにあるので嫌いでは無い。
今のところ、裏切る様子も無いので放って置いても大丈夫だろう。

「スオウなら、博士の所に行きましたよ。」
「べ、ベルガモットさんの所ですね。」
「…ああ、それとチョコレートを一つ、如何です?」

深く考えすぎて、チョコレートのことを忘れるところだった。
リオットが踵を返す前に呼び止めた。
先ほどの様に、爽やかな笑顔を見せつつ箱を差し出す。

「あ、ありがとうございます。」

何の躊躇も無く箱のチョコレートに手を伸ばす。
やはり、この青年は悪人には不向きだ。
人を全く疑わない。
先ほどのスオウはかなり疑いの目を向けていた。

「……」

箱の中から一つ取ると、遠慮がちに口に入れる。
普通に美味しそうにチョコを食べているリオット。
しかし、急に動きが止まる。
顔が徐々に赤くなり、大量の汗が吹き出してきた。

「ひーっ!誰か、誰か水を下さいぃぃぃ!!」

次の瞬間、そう叫ぶとリオットはすごいスピードで走っていった。
突然の大声にアポロは少し驚く。
リオットは滅多にあれほどの大声を出さないからだ。
どうやらチョコの中に唐辛子かハバネロでも入っていたらしい。

「少し可哀想でしたかね。」

そうは言ったものの、アポロは全く同情などしていない。
走っていくリオットを見送っていると、すぐ近くにあるドアが開いた。
そこから見慣れた男が現れる。

「げっ。」
「おや、何処に行っていたのです?」

仕事をしているはずのラムダが
何故か自分の部屋でないところから出てきた。
アポロの顔を見るなり、間の悪そうな顔をする。

「ちょーっと、急用がね。」
「誤魔化さないで下さい。またサボっていたのでしょう?」
「は、ははは~。」

図星らしく、ラムダはわざとらしい笑い声を上げた。
それを見てアポロは目を細める。

「それに、こんなものまで作って…」
「おっ!それ、俺があげた特製チョコ。食ったの?」
「貴方が作った物など、怪しくて食べられませんよ。」
「あんだよ。美味いのに。」

アポロが食べなかったので、ラムダは残念そうな顔をした。

「しかし、少しの犠牲を払ったところ、これが危険な物だと分かりました。」
「少しの犠牲?」
「また、私に悪戯をしようとしましたね?」
「あ、いや、その、違うんだよ。」

爽やかな笑顔を浮かべているが、
殺気がこれでもかというくらい出ている。
それを見たラムダは恐ろしくなって色々と言い訳しだした。

「さすがに今回はお仕置きをして差し上げますよ。」
「やべぇ、アポロの目が本気だ。」

いつもは軽く水に流してくれるのだが、
今回はそうはいかないようだ。
仏の顔も三度までと言うが、ラムダの悪戯は四度目所ではない。
何か面白そうな悪戯が思いつけば、
仕事を放り出して仕掛けてくるのだ。

「逃げるが勝ち!」

これはもう逃げるしかない。
と悟ったラムダはアポロから全力で逃げる。

「私から逃げるとは…後悔しても知りませんよ?」

あっという間にラムダの姿が見えなくなったが、
冷静なアポロはモンスターボールを一つ投げ
ヘルガーを呼び出す。

「さぁ、彼をここに連れてきなさい。」

アポロがそう命令すると、ヘルガーはラムダの後を追いかける。

「うおおっ!犬っころ、邪魔すんな!」
「ウーッ!!」

すぐに追いつかれ、逃げ道をヘルガーに塞がれた。
ラムダはシッシッと手で追い払う仕草をするが、
牙をむき出しにして唸られるだけだった。

「参ったな…そうだ!」

今にも飛び掛ってきそうなヘルガーに、
追い払う方法はないかと模索していると
何かを思いつき、ポケットに手を突っ込む。

「おい、犬っころ。これ好きだろ?」

ラムダがポケットから取り出したのは
ポケモン用のビスケットだ。

「そーれ!取って来ーい!」

ポーンと勢いよく投げたものの、
ヘルガーは全く興味を示さず、ラムダから視線を外そうとはしない。
当たり前のことだ。
このヘルガーはアポロの手持ちなのだから、
ラムダの言う事など聞きはしない。

「おい、何だよ。犬だろお前…うわっ!!」

ラムダの行動が気に食わなかったのか、
ヘルガーは突然、火炎放射を使ってきた。
驚いたラムダは間一髪で避けたが、その勢いで床に倒れる。

「イテテ…これだからアポロの手持ちは嫌いなんだ。」

床に倒れたせいで腰を打ったのか、ラムダは腰を擦っている。
アポロの手持ちは主人に対しては忠実、敵に対しては凶暴。
ラムダは仲間ではあるが、嫌われているらしい。

「あっ、止めろ!服を噛むな!穴が開いたら直すの俺様なんだぞ!」

隙だらけになっていたラムダは
ヘルガーに服の襟首を噛まれ、そのままアポロの元へと引きずられて行く。

「おや、随分と早く連れてきましたね。」
「アポロちゃーん、勘弁してよ~。」
「嫌ですね。貴方が悪戯などと、くだらない事を考えるのが悪いのです。」

許してくれと言わんばかりに懇願してくるが、
どう考えてもラムダの自業自得だ。
今回ばかりは腹の虫が治まりそうに無い。

「いつもすっと水に流してくれるじゃーん。」
「煩いですよ。さらに酷いお仕置きをして欲しいのですか?」
「わ、わかったよ。俺様が馬鹿でした!ごめんなさい!」

虫の居所が悪いアポロに泣き付いたがために、
墓穴を掘りそうになった。
襟首を噛んでいるヘルガーもすごい唸っている。
顔には出ていないが、アポロが不機嫌と感じ
ラムダは自分のしでかしたことを謝る。

「今後は悪戯など止めることですね。」
「じゃ、じゃあ…!」
「言っておきますが、お仕置きは受けてもらいますよ。」
「…俺様がっくり。」

お仕置きが無くなりそうな予感がして
ラムダは期待に目を輝かせたが、
そうは上手くいかなかった。

(あーあ、俺様タダじゃ済まないだろうなぁ…)

自分で蒔いた種ではあるが、
これからされるであろうお仕置きが恐ろしい。
同僚のランスも冷酷なヤツではあるが、
アポロはそれを遥かに凌駕している。
前に、アポロに歯向かった者がおり、
それはもう口には出せないほど酷い目に遭っていた。
最後どうなったかなど知らない。
思い出すだけで寒気がする。

(俺様が生きて帰れます様に!!)

仲間だし、それ程酷い事はしないとわかっていても
ヘルガーに引きずられる中、そう願わずにはいられなかった。





おわり

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沁月さんより、HGSSロケット団幹部で何か一作
というリクを頂きましたので、
ロケット団解散しちゃってただの酒飲みオッサンと化してるラムダと
アポロが悪徳営業再開するということで、
ラムダを連れ戻しに来たランスの話を書かせて頂きました(長
ちゃっかりスオウの名前も出てきちゃってます、なんだか申し訳ない><
苦情等ありましたら、沁月さんのみ受け付けております。










某所、どこかのバーにて
ランプの光が店内を淡く照らし、静かな音楽が響いている。
客の数は少ないが、自分の世界と酒を楽しむには丁度いいようだ。

その中でも一人の男が情けない姿を晒しながら酒を飲んでいる。

「なんで解散宣言しちまうんだよぉ…」

空の酒のボトルが数本置かれているテーブルの上で項垂れながら、
まだ中身が残っているボトルに手を伸ばす。
どうやら、結構飲んでいるようだ。

「いくら子供に負けたからって解散はねーだろ。解散は。」

グラスに酒を注ぎながら、独り言を続ける。

「ロケット団は不滅とか言ってたの誰だよ。チクショウ。」

この男はあの悪の組織で有名なロケット団にいたらしい。
今の姿からはとても想像できない。

「俺様もう駄目だぁ…」

そう言って、乱暴にボトルを置くとまたテーブルにうつ伏せになってしまった。

「どこ探してもいないと思ったら、こんな所にいましたか。」

新しく入ってきた客は、店の中を見回し
ブツブツと独り言を言っていた紫色の髪をした男を見つけると
大きな溜め息をつき、その男に近付く。

「んー?お、ランスちゃんじゃねーの。」
「ラムダさん…これではただの酔っ払いのオッサンですよ…」

聞き覚えのある声に男は顔を上げた。
新客はどうやらこの酔っ払いの知り合いのらしい。
彼の情けない姿にランスと呼ばれる男は呆れた。

「そうだ、お前も飲んで行け~」
「酒臭っ!!貴方どれだけ飲んでるんですか!!」

酒を勧めながらイスから立ち上がると、ランスに絡もうとするラムダ。
しかしラムダから漂う強いアルコール臭に、
ランスはラムダを避ける。

「もー、つれねーなぁ…ランスちゃんは。」
「私に酒を飲んでいる暇はありませんから。」

ランスに避けられたラムダはいじけて口を尖らせ、
自分の座っていたイスに戻ると、グラスに残っている酒を飲み干す。

「じゃあ、ちゅーしようぜ。ちゅー。」
「気色悪いですよ、止めてください。酷い事しますよ。」

いじけたかと思えば、急に変なことを言い出す始末。
これでは本当にただの酔っ払いだ。
先ほど尖らせた口をラムダが近付けてくるので、
ランスは思いっきり手で押し退ける。

「ちぇー、ノリわりぃな。」
「アポロに貴方を連れ戻して来いと言われましたので…」
「あんだよぉ…俺様は帰らねーぞ。」

ノリが悪い事と、連れ戻しに来たという言葉が気に食わなかったのか
ラムダはまるで駄々をこねる子供の様にプイと顔を背けた。
その様子を見て、ランスは溜め息をつく。

「馬鹿言わないで下さい。大切な資金を無駄に使ってしまってるんですよ!貴方は!」
「そんなキーキー言うなよ。頭痛ぇ。」
「飲み過ぎの貴方が悪いんです!」

静かに話し始めたランスだったが、
ラムダがかなり資金を使ってしまってる様で、
最後の方はかなり強めに言うと同時にテーブルをバン!と強く叩いた。
その音に何人かランスとラムダの方を向いたが、
このくらいは日常茶飯事なのか、すぐに酒を楽しむ事へと戻っていった。
叫ぶほどの大きさではなかったが、思わずラムダは耳を手で塞ぐ。
その様子を見てランスはふんと鼻を鳴らして両腕を組む。

「そもそも、貴方が使ってるお金はスオウが新しい地方に行って集めたものです。」
「ふーん。」

まるで他人事の様にラムダは生返事をする。
そのやる気の無い返事にランスは眉を吊り上げた。

「ふーん…じゃないですよ!酒を飲むことだけに使われると困るんです!」
「何が?」
「何がって…貴方…」

むっとしたランスは思わず熱くなってしまうが、
やる気の無いラムダの言葉にランスは呆れて次の言葉を無くした。

「年下の、しかも子供がちゃんと仕事をしているのですよ?恥ずかしくないんですか?」
「別に、俺様は気にしないけど。」
「はぁ…この人にプライドはありませんでしたね。」

スオウのことを子供と言ってしまうのは失礼だとわかっているのだが
この時ばかりは、そうでも言わないと説得できそうになかった。
しかし、その効果は全く意味が無かったようだ。
今更ながらこの飲んだ暮れている男にプライドが存在しない事を
ランスは思い出して、さらに深い溜め息をついた。

「またロケット団を復活させるんですよ?」
「俺様、今そういう気分じゃないの。」

再び悪事を始めると言うのに、全く乗り気でないラムダ。
彼は中身が残っている酒が無いか探し始めた。

「はー…全くこの人は面倒臭いですね。」

全く戻る気が無いラムダに段々腹が立ってきたランス。
この調子では何を言っても、もう駄目だろうと思ったランスは
力尽くで酒を探しているラムダを引っ掴み、そして

バシッ!!

「痛てぇっ!!何すんだよランスちゃん!」

ラムダの頬に平手打ち。
相当強力な平手だったのかラムダは椅子から落ちた。
これには数少ない客が何事かと二人に視線を向ける。
滅多にランスが手を出す事はないのだが、
今日ばかりは抑えられなかったようだ。

「貴方がいつまでも泣き言を言っているからです。」
「だからって平手はねーだろぉ…超痛い。」

引っ叩かれた頬を擦り、椅子から落ちたラムダは涙目になりながらランスを見る。

「おや、一回では効果が無かったようですね?」
「ばーっ!ちょ、もういらないから!いらないから!」

ラムダは悲痛な叫びを上げたが、反省の色が見えないため、
ランスはわざと聞こえていないフリをする。
きっと彼のことだから少し楽しんでいるところもあると思うが…

「どうやらもう一回必要なようです。」
「ごめんなさい!ちゃんと帰ります!勘弁して下さい!」

再びラムダを引っ掴み、平手をお見舞いしようとすると
すごい勢いでラムダが土下座した。
様子を見ていた客はただの痴話喧嘩かと解釈すると
酒を楽しむことに戻る。

「それでいいんですよ。最初からそうして下さい。」
「はい…すみませんでした。」

全く手のかかる人ですね、と言いながら
土下座をしているラムダを立ち上がらせる。

「私のおかげで酔いも冷めた様ですし、さっさと帰りますよ。」
「くそー、自称冷酷のクセに…」
「何か言いましたか?」
「いいえ!何も言ってません!」

踵を返して、さっさと店を出ようとするランス。
ボソリと彼にに聞こえない様、悪口を言ったラムダだったが、
ランスが怪訝な顔をして振り返ったので、とりあえず何も言っていないことにした。

(もう、平手はごめんだ!)

余程ランスの平手が痛かったらしい。
ラムダは今後、ランスを怒らせないようにしようと肝に銘じた。

「言っておきますが、貴方が使ってしまった資金は返してもらいますからね!」
「それって当分給料無しってことか?」
「当たり前です。」
「マジかよ~」

釘を刺すかのようにランスがキツめに言った。
ロケット団の大切な運営資金でもある物を使ってしまったのだ。
自業自得とわかっているが、ラムダはがっくりと項垂れる。

「ちゃんと返すまで私が見張ることになってます。」
「あぁ!?なんだよそれ!」
「貴方が真面目に返してくれれば何もしませんよ。」
「くそ~、当分ランスちゃんと一緒かよ…」

多分、アポロの考えた事だろうと思ったラムダは
今更ながら飲み明け暮れていたことを後悔した。
今後ランスが一緒となると気軽にサボることもできないだろう。

「あ、言い忘れてましたが、アポロも怒ってましたよ。」
「アポロもかよぉ…あいつ怒るとアテナよりめんどくせぇんだよな。」
「自業自得ですよ。たっぷり叱られてください。」
「へーい。」

帰ってもまた怒られるのかよ…と、ラムダは気持ちが沈んだが
アポロに怒られるのはこれが初めてではない。
どうすれば許してもらえるのかぐらいは知っている。

「はぁ…ランスちゃんの平手も食らっちまったし、ひでぇ日だ。」
「ほら、さっさと行きますよ!」

とんでもない日だなと思いながら、店を出ると夜が明けようとしていた。
薄明るくなってきている空をラムダは見つめる。
あまりにものろのろとしているので、
先に行ってしまったランスが遠くで叫んだ。

「ま、ロケット団復活するみたいだし、良しとすっか。」

また痛い思いをするのは嫌なので、足早に追いかける。
こうしてラムダはロケット団へと戻されるのであった。
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